WORKERS STYLE vol.6

 

ヘリテージパンツは完成していない。


ワークウェアとは、現場で履かれて働いて、初めてワークウェアとしての本来の意味・価値が伴う。着る人が自分の癖や働き方、思想を反映させるためのツールのような存在。ワーカーが自分の働くスタイルに合わせてカスタマイズし、それぞれのライフスタイルや価値観を表現していくアイテム。着る人の使い方やこだわりによって、ワークウェアは初めて「完成」されていく。このパンツがどんな風にその人にとっての欠かせない自己表現になるのか。ヘリテージパンツを通して、様々なワーカーにスポットをあてていく。

小林裕司 

1981年生まれ。兵庫県出身。美容師歴は20年以上。現在は東京で「CUE_」の代表を務め、美容師としてだけでなくディレクターとしても活躍中。兵庫で10年間美容師として腕を磨いた後、さらなるスキルアップを目指して上京。雑誌や美容業界のトレンドを研究しながら、多くの顧客の人生に寄り添うスタイル提案を行っている。

 

初志髪師

少し自分の話をするけども、かなりコロコロと髪形を変える。

ある時はロン毛のキムタクに憧れ、ある時はスペックの加瀬亮の坊主に憧れ。

なので足しげく美容室に通う。

初めて小林さんと出会ったのは8年前の高校卒業と共に、所謂イメチェンをするために初めて原宿のオシャレな美容室に行くこと決意したその日。心の臓は今にも口から出そうだったが何とか抑えながら竹下通りを進んだ。

緑に囲まれたその美容室は幾分自分には優しく、あの笑顔が戸を開け出迎えてくれたのを思い出す。

 今、その時とは変わり黄色い外観の自身が代表を務めるお店の戸を開け出迎えてくれた。

 

STYLE:美容師

――朝早く、ありがとうございます。

小林:いえいえ、先週ぶりかな?何でも聞いてください。


――
切ったばっかりで申し訳ないです(笑)では早速ですが、美容師を目指したきっかけから聞かせてください。

小林:最初は、外枠というか浅はかだけどかっこいいなって思ったのがきっかけ。でも、美容師を始めて少し経った時かな、くせ毛の髪の女の子をカットしたことがあったんだよね。その子、最初は自信なさそうな感じだったんだけど、カットが終わった後、めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしてくれて。それ見た瞬間、ああ、これってただ髪を切る仕事じゃないんだって実感したかな。

―― その時に、美容師の本当のやりがいに気づいたんですね。

小林:そうそう。髪を切るのは一つの手段に過ぎなくて、その人の気持ちや雰囲気を変える手伝いをしてるんだなって。それからは、ただ髪型を整えるだけじゃなくて、その人の人生の一部に関わる意識でやるようになったよ。

―― 深いですね。それが小林さんの原動力なんですね。

小林:うん、人が喜んでくれる姿を見たいっていう気持ちが、この仕事を続けるモチベーションになってるかな。

 

―― 美容師として、一番大事にしている道具って何ですか?

小林:やっぱりハサミだよね。これがないと仕事にならないから、美容師にとっては本当に命みたいなもんだと思ってる。一見、シンプルな道具だけど、どんなハサミを使うかで仕上がりも変わるし、使いこなせるかどうかで技術の差も出るんだよね。

―― どんなハサミが自分に合うかって、感覚的な部分も大きいんですか?

小林:めちゃくちゃ大きいよ。手に馴染むハサミを見つけるのって、結構時間がかかるんだよね。俺の場合は、ちょっと重めのハサミが好きで、それを使うとカットの精度が上がる気がするんだ。だから、ハサミ選びは妥協できない。

スタイルの提案を共に


――
美容師として、働く服にはどんなこだわりがありますか?

小林:見た目はもちろんだけど、機能性も大事。特に、美容室って髪の毛が飛び散るからさ、ニットとかは絶対着ないね。髪の毛が絡みつくと掃除が面倒だし、清潔感がなくなるのも嫌だから。でも、見た目だけの服じゃダメで、ちゃんとスタイルがきれいに見えるものを選んでる。

―― スタイルがきれいに見えるって、具体的にはどういうことですか?

小林:例えば、服のシルエットがちゃんと整っていて、自分の体型を引き立てるものかな。それから、ツヤのある素材だと清潔感が出るから好きなんだ。お客さんにこの人、センスあるなって思ってもらえるように、服選びも気を抜けないんだよね。

HT03 Volume

―― 美容師の仕事としても、服が一部になってるんですね。

小林:そうそう。お客さんにとっては、俺らの服も含めて提案だと思うんだ。だから、清潔感があって品の良さも感じられる服を着るようにしてる。

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ヘリテージパンツと


――
ヘリテージパンツ、実際に履いてみてどうでした?

小林:いや、これね、めちゃくちゃ良かったよ。まず、生地がしっかりしてるから、動いてても全然へたらない。それに、シンプルなデザインだからジャケットにも合うし、ラフにトレーナーで合わせても全然OK。そういう使い勝手の良さがすごくいいね。

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―― ポケットとかはどうですか?

小林:ポケットも便利なんだけど、個人的にはもう少しサブポケットが欲しいなって思った。例えば、ブラシを入れるちょっとしたスペースとかがあると、もっと作業中に助かるかな。でも、それを除けば文句なしの履き心地だよ。

―― 長時間履いていても疲れないのは大事ですよね。

小林:そうそう。動きやすいし、丈夫で安心感があるのが一番嬉しいポイントだね。

ワークウェア


――
小林さんにとって、ワークウェアってどんな存在ですか?

小林:うーん、自分のスタイルの提案みたいなもんかな。美容師にとって、服も含めて自分自身を表現する手段だから、ワークウェアもただの作業着じゃなくて、自分を引き立ててくれる存在であってほしい。

―― 服が自身の提案、面白いですね。

小林:そうそう。服ってただ着るだけのものじゃなくて、自分の価値観やスタイルをお客さんに伝えるツールだと思ってるんだよね。ヘリテージパンツは、その意味でめちゃくちゃ頼れるツールだと思う。

 

「髪を切る」という行為を超え、小林裕司さんが目指すのは、お客さんの存在そのものを肯定し、その人自身を引き立てること。美容師として20年以上向き合ってきたその姿勢は、ヘアスタイルを作るだけでなく、人生の一部をデザインしているようだった。

そんな小林さんにとって、服もまた欠かせない表現の道具だ。彼が選ぶ服は、美容師としての仕事のしやすさだけでなく、お客さんに「この人、センスがいいな」と思わせるための清潔感と品が求められる。ヘリテージパンツは、まさにその両方を備えたアイテムだった。

作業中に役立つポケットの使い勝手や、長時間の動きを支える快適さ、生地の丈夫さ――そのすべてが、ヘリテージパンツは、ただの作業着ではなく、美容師としての“スタイル提案”をさらに引き立てる要素だと証明している。

美容師として、彼が追い求めるのはトータルのスタイル。それは髪型だけでなく、その人の全体像を引き立てるものであり、その一部としてヘリテージパンツが自然に溶け込んでいる。

仕事に向き合う一つ一つの瞬間、その中で手にする道具や身に纏う服が、どれほど人の心に影響を与えるのか――小林さんの話を通じて改めて考えさせられる。ヘリテージパンツが支えるのは、仕事だけではない。

余談だが店舗のロゴデザインは私。

一生誇りに思う。

HP:cue_

text and photographs     hilomi yoshida