WORKERS STYLE Vol.3

 

ヘリテージパンツは完成していない。


ワークウェアとは、現場で履かれて働いて、初めてワークウェアとしての本来の意味・価値が伴う。着る人が自分の癖や働き方、思想を反映させるためのツールのような存在。ワーカーが自分の働くスタイルに合わせてカスタマイズし、それぞれのライフスタイルや価値観を表現していくアイテム。着る人の使い方やこだわりによって、ワークウェアは初めて「完成」されていく。このパンツがどんな風にその人にとっての欠かせない自己表現になるのか。ヘリテージパンツを通して、様々なワーカーにスポットをあてていく。

 

田口暖

1997年宮城生まれ。バスケットボールプレイヤー。現在は東京ユナイテッドバスケットボールクラブ所属。新潟の専門学校時代にトライアウトに受かり東京エクセレンスに入団。(現横浜エクセレンス)

 

バベルの階段

聊かあのオレンジのリングは僕に苦い思い出を掘り起こさせる。高校生くらいの時だったか、恋だのなんだので大盛り上がりの女子の会話の中で当時、僕の意中の相手が「彼氏はバスケ部がいいよね」と笑顔で話していた。バスケ部とは程遠い、剣道部だった思春期男児にはボディブローのような衝撃だったのを覚えている。そんな昔の思い出に耽っていると向こうから見知った顔。

 田口選手とは何度かuniversaloverallの展示会でお会いしたことがあったが、特別深く話をしたことはなかった。今思うとバスケ選手にしては小柄で、何か人を安心させる笑顔が印象的だった。バスケ日和。

ダムダムダム。

 

 

スタイル:アスリート/バスケ

 

 ―田口選手、お久しぶりですね。今日はよろしくお願いします。

 田口:選手はやめてください(笑)よろしくお願いします。

 ―ちなみに、アスリートの方に取材するのは初めてでして。普段のスケジュールや具体的にどんなことをしているか聞かせてください。

 田口:もちろんです。あまり知られていないですし、良い機会ですね。基本的には「試合期」があります。大体9月末から5月くらいまでの期間です。

―試合期、ですか?

田口:そうです。その期間はほぼ毎週末に2日間連続で試合をします。続けて同じチームと対戦するんですよ。それ以外は基本的に練習で、これを繰り返していきます。リーグに17チームほどいて、総当たりで戦績がいいと5月下旬の昇格トーナメントに進めるんです。

 

―なるほど。試合も練習も続いてかなりハードなスケジュールですね。

田口:そうですね、もう8年間プレーしているので、気づけば長く続けているなと思います。

―その8年間の中で、特に印象に残っている出来事やプレーはありますか?

田口:やはりB3リーグで優勝した瞬間ですね。仲間と最高の瞬間を共有できたのは忘れられません。理由があってビールかけはできなかったんですけど、水をかけ合って喜びましたね(笑)コーラでやっている人もいて、全員ベタベタでしたが(笑)

 

↑HT01 ORIGINAL FIT

―いい思い出ですね(笑)。ちなみに、試合の前などはどのように気持ちを高めているんでしょうか?

田口:僕の場合、移動中の服装やスタイリングにもこだわっていて、気分を上げるようにしています。アメカジ系の服が好きで、スタイリッシュに整えて試合に臨むと気が引き締まりますね。ファンの方も見てくれるので、見た目にも気を配っています。

 

―なるほど、移動中から気持ちを作っているんですね。そういったこだわりを持つ中で、服装についてはどう意識していますか?

田口:僕の場合はチームのユニフォームを着ていることが多いので、移動や遠征でのスタイリングは意識していますね。リラックスしながらもオシャレができるような服を選んでいます。

―そんな中で、ヘリテージパンツは暖さんにとってどんな役割ですかね。やはり移動の場面で活用していますか?

田口:そうですね。ヘリテージパンツは見た目がクラシックでカッコいいのに、履き心地が本当に良い。移動の際も長時間座ってもシワになりにくくて、スタイルも崩れないので助かっています。どんなコーディネートにも合いやすいので、遠征のときは特に重宝していますね。

 

―快適さとスタイルのバランスが取れているのが魅力ですよね。最後に、田口選手にとって服が持つ役割とはどのようなものでしょうか?

田口:僕を応援してくれ、支えてくれるサポーターのような存在だと感じます。

試合に向かう時や普段の生活でも、アスリートとしても、生活を支えてくれる大切なものだと感じています。在らずして選手は成り立ちませんから。

 

 

スケというと「あひるの空」だ。スラムダンクファンの方、申し訳ない。主人公の空はバスケをやるにしては小柄。そのためか最初は相手にされないが、努力で周囲を巻き込み少しずつチームまとめていき、仲間と共に数々の困難や挫折を乗り越える。そんな内容、だった気がする。

 まさに暖さんは空のような人。

 ひと際、取材時も真摯にバスケとは、仲間がいて成り立つことや、信頼の積み重ねが全てだと話してくれた。

8年間という長いキャリアも「気づけばここまで続けてきた」という自然体の言葉がとても彼らしい。

 暖さんにとって服は、試合に向かうための「サポーター」そのもの。ファッションにこだわることで気持ちを整え、毎日を支えてくれる存在だという。

その一言一言から、服に対する愛着が感じられた。「在らずして選手は成り立たない」と語る言葉が印象的で、まるで服が彼の一部であり、共に戦うパートナーであるかのようだ。

text and photographs  by hilomi yoshida